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芸術と中島公園

中根邸の画家たち

かつて中島公園のほとりに、画家たちが集い、日々酒を酌み交わし、芸術談義に花を咲かせる屋敷があった。
戦中戦後の物資が極度に不足していた時代に、東京などから訪れた画家を滞在させ、食事を振る舞い、自由に絵を描かせる。その評判は、次々に文化人をここへと足を運ばせた。
中根邸。銅葺き屋根のため「アカガネ御殿」と呼ばれた。その画家たちの楽園は、家主・中根光一が東京に移ることで、1954年(昭和29)にその幕を閉じた。

中根光一は父が築いた莫大な財産を1937年に31歳の若さで相続しました。現在の札幌コンサートホール・キタラの南隣の約2000坪の敷地と広大な屋敷をはじめ、その額は当時の金額で数千万円と言われております。
さまざまなことに興味を示した中根でしたが、変わらずに最も愛していたのが美術でした。

「画家たちのパトロンとして」

日本が戦争へと突き進んでいく時代、徐々に深刻化していく物不足の中において、中根は父から継いだ富のもと、彼を頼って札幌を訪れた画家を手厚くもてなし、食事を振る舞い、宿泊させ、時に作品を購入するなどしていました。
また、東京を焼け出され、札幌に疎開してきた田中忠雄に生活用品を提供したり、食糧事情の悪い東京の野口彌太郎にバターなど送った記録もあり、画家たちの生活を支えていました。

私財を投じて画家を支援し、その絆によって生まれた中央画壇とのつながりのなかに展覧会や講習会をサポートしていった彼の存在は、地元の画家たちで固まりがちであった札幌の美術に刺激を与え、その後の多様な動きを生み出すきっかけとなりました。
ただ皮肉なことに、財をつぶしてまで画家たちの面倒をみたことで、1954年その幕を閉じました。

集いし人々

児島善三郎が、中根邸に滞在した際に描いた「初秋の中島公園」

児島が知人の画家・大久保泰に宛てた手紙に「モウ一枚、今描きかけているのは公園の池が画面低く、前景の左に大きなポプラの木が画面を抜けて高く空に聳えている二十五号、つまり空が非常に多いのですが、初秋の鱗雲が、その空一面を渡って流れて行っている画です。春描いた「立春」に対し、これは「立秋」と題するつもりです。只、説明に終わっては仕方がないので、何かしら現象の奥に宇宙の営みを捕捉したいと思っています。」

児島善三郎(初秋の中島公園)
1946年作 個人蔵

野口彌太郎が中根邸へ足を運んだ際の旅費や滞在費は、中根が負担するとともに、中根は野口の作品も購入しています。
その他にも、戦時中の窮迫しているときにチーズやらバターなどの食料品も東京の自宅に送られており、野口は書簡にてその謝意を切実に表しています。
また、両者にはそれを超えた友人としての関係も築かれていた。中根の病気や家族の体を気遣っており、彼らの健康状況は逐一野口の耳に入っていたようです。
さらには、中根を芸術理解者と認め、制作への熱意を伝えたり、中根が願う北海道文化の向上に何らかの力になりたいとさえ訴えていた。

野口彌太郎(札幌「植物園」)
1953年作 芸術の森美術館蔵

中島公園周辺の文化施設のご案内

北海道立文学館

北海道出身の文学者や北海道にゆかりの深い文学者に関する文学資料が展示されている。中でも常設展は直筆原稿や書簡・初版本など貴重な資料約1800点を展示し、北海道文学の流れをわかりやすく紹介している。
また館内には、北海道ゆかりの作家の油彩や彫刻など多数展示。(写真中は松樹路人の油彩、右は佐藤忠良のブロンズ作品)

札幌コンサートホール Kitara

世界的な水準の音響施設を整えた音楽ホール「札幌コンサートホール・キタラ」。その音響は世界最高級ともいわれている。
キタラのシンボルはフランス製パイプオルガンと安田侃の彫刻「相響」。安田侃の作品は、大ホールとメインエントランス、外の三つの大理石が相互に響きあってひとつの作品を構成している。もう一つおすすめなのが「テラスレストランKitara」です。
休館日を除き毎日営業しているので、コンサートの機会はもちろん、公園散策の休憩に、素敵なレストランでのランチは、ちょっと贅沢な気分を味わえます。(ランチは1,500円前後)

豊平館(国指定重要文化財)

明治初期を代表する洋風建築である豊平館は、明治13年(1880年)開拓使直属の貴賓用ホテルとして建てられた木造洋風ホテルとして現存する我が国最古の建物で政府機関が建てた唯一のホテルである。
設計は開拓使工業局営繕課安達喜幸が担当し、棟梁大岡助右衛門が工事を請け負った。
豊平館の題字の揮毫は三条実美(太政大臣)によるものです。

渡辺淳一文学館

「エリエールスクエア札幌 渡辺淳一文学館」は、大王製紙の文化支援活動の一環として、1998年6月に開館。
建築家 安藤忠雄の設計による建物は、斬新でありながら凛とした趣のあるものとなっています。雪面に片脚で立つ白鳥をイメージしたものだそうです。
1993年、北海道空知郡砂川町出身、代表作に「遠き落日」・「失楽園」がある。
初老の男女による不倫を描いた「失楽園」は大ブームを呼び、映画・TVなどにもなる。
2004年10月から、日経新聞朝刊にて「愛の流刑地」を連載。

八窓庵(国指定重要文化財)

中島公園の日本庭園にひっそりとたたずむ茶室 「八窓庵(はっそうあん)」。
安土桃山時代・江戸時代初期の大名茶人・小堀遠州(こぼりえんしゅう)の作といわれています。池のある美しい日本庭園。春のシダレザクラ、秋の紅葉が素晴しい庭園です。夏は芝生の上で休息も出来る憩いの場所。冬季は閉鎖されます。
公開時間:9時00分から17時00分(外観観覧のみ)
休館日:冬季間(11月上旬~4月下旬)
観覧料:無料

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